三線を調べるようになり、興味が出てくると、さて誰が製作者で著名、有名なんだろうか?と気になってきます。二本目の三線、あるいは高額の三線に手を出そうと思う方ならなおさら気になるでしょう。その一つに、2012年に伝統工芸品に指定された際、工芸士に認定された7名の方がまずは著名な製作者と言えるでしょう。
なかでも、頭一つ以上抜きん出ているのは銘苅春政氏でしょうか。銘苅春政氏の作る与那城型は完成系と呼ばれるほど美しく、現在の三線職人の方々も銘苅氏を師事し、その技をぬすもうとする方は多くいらっしゃいます。2022年5月にはかの有名な情熱大陸にも出演ということで、ますます第一人者として認識されることでしょう。銘苅氏の棹を見ると、三線職人や三線弾きの人は一発で「銘苅さんの棹だね」と言い当てます。それほど群を抜いて特徴的で美しいと言われています。
また、故人ですが、昭和の名工 又吉真栄氏の三線も有名で人気があります。
さて、三線は2012年に、沖縄県が指定する伝統工芸品の26番目としてようやく指定されました。そして、2018年にこちらもようやくですが、国の伝統工芸品に指定されました。今まで指定されてなかったのがむしろ不思議ではあります。国の伝統工芸品に指定されたからといって関係性はないと思いますが、職人さんの人間国宝が出てくるといいですね。
県の伝統工芸品指定の際に、以下の7名の方が伝統工芸士に認定されています。
こちらは沖縄県指定の伝統工芸士です。
親泊宋康氏(故)
又吉真也氏(故)
とはいえ、例えば前述の銘苅春政氏は現在あまりに棹の製作依頼が多い(全国から原木持参で氏の元を訪れる人が後を絶たない)こともあり、棹以外の行程(塗り、胴、部当てなど)はされていません。もし銘苅氏の棹で三線が欲しい方は、お弟子さんにあたるみなみ三線店さんのサイトをみてください。私の三線は棹は銘苅先生の手によって作られていますが、塗り以降はみなみ三線店で仕上げられています。
銘苅氏以外の方の三線はそれぞれの工房か、または完成品であれば沖縄県三線製作事業共同組合で販売されています。
銘苅氏のみならず、他の製作者の方でも塗りや胴は外の製作者に出すというケースもあるようです。よって、一から十まで行う方もいれば、分業されるケースもあるため、一概に著名な製作者は、と書くのは乱暴な行為ではあります。
が、完成品のなかから間違いない一挺を探したい場合は沖縄県三線製作事業共同組合のショップで探すのが手っ取り早いと思います。伝統工芸士の7名中6名がここに加盟していることからも、確かなものを置いています。
オーダーメイドで製作したい場合は、店主の方の三線に対するこだわりをチェックしたり、口コミを参考に探すしかありません。
私の個人的な経験から好きな三線職人さんを挙げるとすれば、みなみ三線店の枝川 勝氏、照屋林助三線店の照屋林次郎氏のお二人がおすすめです。このお二人の三線は対照的な感じがします。枝川さんは元々銘苅春政氏に師事していたこともあってか、正統派の美しさを感じます。優美です。特に沖縄県立美術館•博物館館長賞を受賞した湧川開鐘の写しが醸し出すオーラは最高級です。お金があったら即買いたい(150万円)。
一方、照屋林次郎さんの三線は男性的な風貌と言いますか、猛々しいオーラがあります。お店にあった知念大工型を弾かせてもらいましたが、棹の存在感、握り心地は最高に心地よく、朴訥とした雰囲気のなかに美しさがある。そんな表現がよく似合う三線でした。ちなみに、よなは徹氏が使用されている三線は照屋林次郎さん作の与那城型のようです。
私は、みなみ三線店の枝川さんに沖縄本島産黒木で一本与那城型三線を作ってもらっていましたが、古典のメインの三線で使っています。音、弾き心地、カラクイの具合など、すべてに置いてパーフェクトな一本です。枝川さんはその製作過程をブログで共有しており、発注側も安心してオーダーできます。実はこれ、沖縄県外からオーダーすると結構大事なんですよね。頻繁に沖縄に行けるわけでもないため、コミュニケーションが採れないとかなり不安になります。
そして、八重山産の原木(八重山黒木、八重山ゆし木)を探してる方は、八重山三線工房がおすすめです。ここは、八重山産の原木しか扱わないという珍しいお店で、石垣島の三線工房だからこそあるネットワークで原木を入手して作られてます。ここの特に黒ゆし木と呼ばれるゆし木の実入りが音が素晴らしく、とても良い三線です。黒ゆし木は滅多に手に入れられない希少な原木で、私の知る限り大量に保有されてるのは八重山三線工房だけです。有名雑誌のVOGUEに取材されるなど、いま注目度が上がってる三線工房です。