三線の黒木不足がいよいよ深刻になってきました。
誤解を恐れずに言えば、あるところには黒木はまだ存在しているのですが、情報を知らないとその三線屋にたどり着けないといったほうが正しいかもしれません。
三線屋さんによって、保有数に差が出てきていて、ないところは数十本というレベル(あと数年持つか?)という数になってきています。
改めて、世の中の三線で出回っている希少度合いで上から並べると
沖縄本島産黒木(島クルチ)
八重山黒木(エーマ)
カミゲン黒木、フィリピン黒木、ユシ木
縞黒檀、カマゴン
などがあります。少し前まではカミゲン黒木もそこそこあったのですが、最近はひび割れしていないカミゲンを見ることも随分希になってきました。
そして黒木ではないですが、ユシ木(特に実入り)も希少性が増していて、ものによっては黒木を上回る価格帯で取引されています。
なので見つけたら迷わずに即購入!が理想ではあるんですが、実際に三線屋さんがよく言う「悪い八重山よりも良いカミゲンのほうがいい」と言われるように、特に八重山黒木は一種の宗教化じゃないですが、八重山だったらなんでも良いから高値で売り買いするみたいな風潮があるのも事実。実態に良い木かどうかは別として、八重山信仰みたいなものが現在は蔓延っています。
このサイトを作り始めたのがすでに10年近く前になりますので、いろいろとこの10年間で情報がアップデートされてきました。
2025年1月現在ですが、少し情報をアップデートしようと思います。10年経過した今でも変わらず希少価値が高く人気なのが八重山黒木の三線です。もちろん八重山だったら全てが良いのかというと決してそうではないのですが、希少性からも未だ根強い八重山信仰があり、値段は高額になるケースが多いです。
なかにはヤフオクやメルカリなどで、八重山黒木である証明書はあるか?というような書き込みを目にしますが、私が知る限りどこのどの機関もこれが何の木かと証明できるようなところはなく、その証明書というのは一体どこからそんな話が出てくるのか不思議に思って見ております。
さて、本題に戻り八重山黒木ですが、ちょくちょくと原木そのものを目にする機会が出てきました。これは悲しい話でもありますが、このサイトを作り始めた頃から時間が経過し、現在数多くのベテラン三線職人さんが亡くなられたり、あるいは高齢によって廃業されたりする話を聞くようになりました。
とここまで書きますと、勘の良い方はお気づきかもしれませんが、廃業された三線屋さんが所有していた原木達が次の三線屋さんへと引き継がれていっているわけです。
そのなかには出所が確実な八重山黒木の原木も存在しています。2024年末に久しぶりに訪問してまいりましたみなみ三線店さんには、そんなとある八重山の三線店から譲り受けた八重山黒木(出所が確かなもの)が数十本存在していました。
サイトには掲載されていないようですが、気になる方はぜひお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。値は張りますが、確実に八重山黒木の三線を手に入れるチャンスです。
そんななか、立ち話のついでに原木の一つの見分ける方法みたいなものを伺えましたので記載したいと思います。これは100%確実だと言い切れるものではないですが、参考までに知っておいて損はないかもしれません。
まず、海外から輸入されてきた材の特徴として、図1の左の原木(カミゲン黒木)の天の下側にあたる部分に赤い矢印を記載しておりますが、ほっそりしているのがわかるでしょうか。
これは、海外から送られてる材がおそらくスペースを小さくして一本でも多くコンテナに積載するためか、日本に入ってくる頃にはほっそりとこの見た目になっているようです。
反対に、八重山黒木、沖縄本島産黒木は沖縄県内で木材から県内の製材所で製材されていますので、同じく図1のように角ばって天の周りに余裕をもって製材されることが多いようです。
もちろん全部が全部この通りとはなっていないかもしれませんが、一つの参考としては知っておいて損はないのではないでしょうか。
また、沖縄県内で製材される原木のもう一つの特徴として、心の後側を残して製材されるのも一つの特徴のようです。このあたりは正直カミゲンとの見分けも素人ではよくわからないのでなんとも言えないですが、原木の製材の違いを見ておくと少しは見分けがつくかもしれませんね。
三線化してしまったものは、もはや見分けがつかないようで、言ったもん勝ちみたいなところもありそうです。過去に名前は伏せますが、某有名な職人さんが「長年三線を作っているかノミを入れれば八重山かどうかすぐに判別できる」とおっしゃっていたので、八重山か不明な三線を持参していったところ、心を軽く削られて一言「わからん」とおっしゃったのが忘れられません。
とにもかくにも、私自身沖縄本島産黒木の与那城を所有しておりますが、それが木のせいか三線そのもののバランスのせいかはわかりませんが、音の響きが大変よく、一番気に入っております。
少し前に沖縄本島産の黒木で与那城を作ってから沖縄本島産黒木(通称島クルチ)にぞっこんな私ですが、そもそも島クルチは希少でほぼ手に入らないのと、良い原木もなくなってきました。ので、今一番注目しているのがこの二つです。
みなみ三線店が独自にネーミングした模様がきれいなカミゲン黒木、天川杢です。あまかーとは言いえて妙で、スンチー塗りをした際にシラタ部分がきれいな色になり、まるで天の川のように見える、という意味だそうです。古典ではなかなか難しいかもしれませんが、民謡だったら全然問題ありません。
元来、ギターなんかは虎目のレスポールなど杢目の鮮やかなギターは高額で取引されていますが、三線も虎杢と呼ばれる木はあるものの、一般的には黒が良いとされてきました。でも、若い唄者の方などは杢目がきれいな三線を使われているケースが増えてきたので、今後はこっちが主流になっていくのかなって思います。どう考えてもこっちがきれいですしね。
開鐘のなかでも音が良いと言われた富盛開鐘に使われているのがユシ木です。ユシ木のなかでも、実入りといわれる芯の部分を使ったユシ木の実入りは材質が硬くしなやかで、音が響くと言われています。黒木と違って柔らかな音色だと言われることも多く、民謡の方が多く利用しているイメージです。
昔のユシ木三線などは、黒塗りと言って黒く塗られているものも多く見かけます。最近はスンチーという透明の塗りを施して、赤茶っぽい色をした三線も増えています。
今までは山原産のユシ木が有名でしたが、最近は石垣島に自生する八重山ユシ木が注目されはじめています。芯の部分が黒いものと赤いものがあり、特に黒いもののほうが音が良いと言われ、黒ユシ木と呼ばれています。八重山三線工房にある黒ユシ木を先日少し弾かせてもらいましたが、柔らかく響くとはこのことか!と少し感動しました。沖縄本島の有名な三線職人さんも、この原木をねだりにくるそうです。それぐらい良い木なんですね。
まだ原木は大量にあるものの、良いユシ木を探している方は早めのほうが良いのかも。そして、八重山にある三線工房ならではですが、八重山黒木も数本あります。