三線の棹ってどれもかっこよく見えますよね。正直、どこをどう見れば上等(良い)な三線なのかは個人の好みも当然あるんですが、最初はよくわかりません。
いろんな三線職人さんに話を伺い、カッコ良い三線、美らかーぎーな三線とはどこがどう良いのかを聞いて見ると、いくつかの見るべきポイントがわかってきました。そのポイントを少し書いてみたいと思います。
ちなみに、王朝時代の三線で最も美人だと呼ばれることの多い志多伯開鐘(したはくけーじょー)などは、解説しなくてもその姿を見ると美人!と思うはずです。
三線の顔がどれだけ左右上下にバランスが取れているかをみると、きれいな三線が何かが見えてくると思います。ここで書くのは見た目の話ですので、音は関係ありません。
これは、あくまで銘苅春政先生をはじめ、多くの職人さんの話を聞くうちに、このあたりのポイントを見て判断されてるなってところを抽出したものです。
まず、一番わかりやすいのが①のバランス。天の上と乳袋のバランスが良いかどうかは、一つ美人かどうかを決めるポイントでしょう。①の上の部分が大きく頭でっかちな三線もあれば、乳袋が妙に大きい三線も見かけます。それぞれ、野暮ったく見えてしまうので不思議なものです。好みの差もあると思いますが、乳袋より多少天が広めにとられているもののほうがバランスが良く、きれいに見えるかと思います。
次に、②の稜線です。ここはそれぞれの職人さんによって、曲線の描き方が大きく異なります。さすがに曲線が波打ってるような方は滅多にいませんが、たまに中心がずれてる?っていうような三線も見受けられますので、チェックしてみてください。
最後に、③の角度に関して。これを言われたのは銘苅先生だけでしたが、角度がキツすぎず、浅すぎず、ちょうど良いバランスが取られているかどうかが大事とのことでした。以前持参した三線を見て、この角度はキツすぎて美しくない、と言われました。
以下、3つの三線の顔を載せます。最後にある銘苅先生の与那城は平成30年作なので最近のもの。大真壁と作成年が違うことによる変化が見えます。
最近の作品は、天の幅が少し狭くなってきたものをよく見かける気がします。長年の制作で少し作風が変化してきているのでしょうか。
枝川さんは銘苅先生の影響を感じる美しい顔立ちですが、より顔立ちがはっきりしていてとても美人です。
側面部分に関してはあえて書く必要もないと思いますが、①の曲線の美しさと②の厚みのバランス感でしょう。②が分厚すぎても野暮ったくみえます。天の中央部だけ分厚く、先端から下にかけてはすっきりしているものすごく綺麗な曲線の三線もあります。ぜひ気にかけて見てみてください。
これはいろんな三線を見て、どういう曲線が美しいのかを見ていく選球眼がいるかもしれません。
また、①がかなり曲がっているものを曲(たまい)と言います。曲真壁(たまいまかび)が有名ですが、ここを普通の真壁よりも曲げる真壁があります。
上記と同じく、3つの三線の側面部分を掲載します。どれもとても美しいですね。
三線の美しさを語る上で、どうしても顔が先行してしまうのですが、もう一つしっかりとチェックするべきところは鳩胸でしょう。
昔の三線は顔はきれいだが、鳩胸の作りはあまりよくない、とは著名な職人さんがおっしゃっていました。確かにあまり鳩胸を意識した作りのものは見かけないかもしれません。
確かに古い = なんか価値がある、良いというイメージがありますが、実際のところはただ古いだけなものもあります。
そしてこの鳩胸の曲線は、三線を弾く人よりも製作する人がよく見るポイントです。
このサイトでも数多く紹介している銘苅春政先生はこの鳩胸の曲線の出し方がすごく、他の方では真似できないそうです。ご本人は、卵の曲線のイメージとおっしゃっていました。
みなみ三線店の枝川勝さんは銘苅先生に師事していることもあり、鳩胸の作りはそっくりです。
三線は琉球王朝の時代からあったものですが、遡ればとても古い三線が存在します。ただし、実際には製造年不明であったり、琉球王朝時代の三線と称し、買ってみたら真っ赤な嘘だったみたいなものも存在します。
いつの時代のものかを証明するのは難しいですが、月に一度行われている三線品評会などに出して鑑定してもらうのは一つの手です。
とにもかくにも、美しい三線は現代の名工達が切磋琢磨して作り上げていますが、少し古い三線も独特な趣があって私は好きです。写真は昭和の中期〜後期作と思われる真壁型三線。
銘苅先生のようなシャープさはないものの、数十年前の三線特有の暖かさのようなものを感じられる一本です。